PCR検査とどこが違う? 新型コロナウイルスで注目の「抗体検査」とは?

この1年、私たちは「新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)」という、これまで経験したことがないウイルスと対峙しながら過ごしてきました。当初は未知であったことも少しずつ解明され、現在では病院などの医療施設だけでなく、民間会社が提供するサービスを通して「PCR検査」や「抗体検査」を受けることができるようになりました。

今回は、仕事や社会生活を行う上で、また、家族を守るため、そういった検査を受けてみようという時に知っておきたい「抗体検査」とは何か、そして「PCR検査」との違いなどについてご紹介します。

目次

  1. 抗体とはなんですか?
  2. 抗体検査とはなんですか?
    1. 2-1.抗体検査の「陽性」「陰性」の結果はどのように解釈すればいいですか?
    2. 2-2.どのような人が受けるべき検査ですか?
  3. PCR検査・抗原検査との違いはなんですか?

ソーシャルディスタンスやテレワーク、マスクの着用などが当たり前の世の中となり、個人それぞれが新型コロナウイルスに備えることを求められるようになりました。そんな中、ニュースでは「PCR検査」、「抗体検査」、「抗原検査」というさまざまな検査の名前を耳にしますが、いったいどのような違いがあるのでしょうか。今回は特に「抗体検査」にスポットを当て、それぞれの検査との違いにも注目します。

抗体とはなんですか?

私たちには、外部から体内に入ってくる病原性のウイルスや細菌などの異物から体を守ってくれる機能があります。これらの異物が持つ特有のタンパク質を「抗原」といい、その抗原を取り除くためにつくられる免疫グロブリンというタンパク質を「抗体」といいます。

細菌やウイルスなどが体に入った場合、体内では抗原を捕まえて結合するための抗体がつくられます。抗体が抗原と結合することで、抗原を無力化、無毒化させたり、貪食細胞であるマクロファージが抗原を飲み込んで消化しやすくさせる働きをしたり、免疫システムを構成するタンパク質(補体)を活性化させて細菌を破壊するなど、その働きにより病原体などが増殖しないようにしてくれています。

また、一度、病気に感染すると、抗体をつくって放出する役割を持つB細胞の一部が免疫記憶細胞として体内に長く存在するため、2回目に同じ病原体が侵入してきた時には、その病原体だけを攻撃する抗体を速やかにつくることができ、感染や発症の防御に役立っています。

抗体検査とはなんですか?

新型コロナウイルスの抗体検査は、血液採取により行われ、血液中に新型コロナウイルスに対する抗体「IgM抗体」と「IgG抗体」がつくられているかどうかを検査します。検査をすることで過去に感染したことがあるか、抗体をすでに獲得しているかを調べることができます。

2-1.抗体検査の「陽性」「陰性」の結果はどのように解釈すればいいですか?

「IgM抗体」は、病原体が侵入した後に最初につくられる抗体で、発症から1週間前後の感染初期に抗体量が増えます。検査で「IgM抗体」が「陽性」となった場合は、過去1週間以内に感染した可能性が高いと考えられます。この場合、PCR検査、抗原検査などの確定診断を行う必要があります。

「IgG抗体」は、発症から3~4週間経過してから陽性となります。検査で「IgG抗体」が「陽性」となった場合は、過去数ヶ月以内に感染した可能性があり、症状が消失していれば治癒している可能性が高く、周囲に感染させるリスクも低いと考えられます。

「IgM抗体」と「IgG抗体」が両方とも陽性だった場合は、新型コロナウイルス感染症に罹患しており、まだ発症初期の可能性から周囲に感染させるリスクがあります。PCR検査、抗原検査などの確定診断を行う必要があります。

「IgM抗体」と「IgG抗体」が両方とも陰性だった場合、新型コロナウイルスに罹患したことは無いという結果ですが、発症から2週間以内だと偽陰性といって、本当は罹患しているのも関わらず陰性と出てしまうことがあるので注意が必要です。

2-2.どのような人が受けるべき検査ですか?

新型コロナウイルスは感染者の過半数は発熱や咳などの典型的な症状が出ない、無症状や軽症だといいます。

現時点で無症状の人が抗体検査を受けることにより、過去にかかったか、抗体を獲得しているか、新型コロナウイルス感染の疑いがあるかを調べることができます。

一度、感染した人が2回目の感染をしないという確証はまだありませんが、すでに体内に抗体がつくられていた場合、周囲に感染させるリスクが低いと考えられています。

PCR検査・抗原検査との違いはなんですか?

PCR検査とは、検査時点で体内にウイルスが存在するかを調べる検査です。鼻咽頭ぬぐい液または喀痰(かくたん)または唾液を採取し、遺伝子を増幅させ、新型コロナウイルスに特徴的な一部分の「遺伝子の配列」が検出されるかを調べます。PCR検査は新型コロナウイルス感染症の確定診断に使用されており、陽性判定が出た場合には新型コロナウイルスに感染しているということになります。検査は医師が総合的に判断して感染が疑われる人や感染者の濃厚接触者、クラスター関係者などに行われます。

抗原検査とは、PCR検査と同様、検査時点で体内にウイルスが存在するかを調べる方法です。PCR検査はウイルスの遺伝子を検出する方法であるのに対し、抗原検査はウイルス特有のタンパク質を検出します。PCR検査に比べ検出率は劣るとされていますが、短い時間で結果が出ること、特別な検査機器を必要としないことから、救急外来や手術前などで発熱などの症状があり早期の対応が必要な場合やクラスターが発生した際など、速やかに判断が必要な場合などに用いられます。

抗体検査は抗体の有無を調べ、過去の感染(抗体の獲得)を調べるのに対し、PCR検査と抗原検査は遺伝子や特有のタンパク質を調べることで、現在、体内にウイルスが存在しているか、つまり新型コロナウイルスに罹患しているかを調べる検査です。

ご紹介したとおり、それぞれの状況によって有効な検査は異なります。症状がある方は保健所や相談機関、病院などの指示に従うことが基本ですが、もし、症状がない場合で、免疫を獲得しているか確認したい場合は対応する検査は抗体検査となります。

新型コロナウイルスは新しいウイルスのため、まだ研究段階ではありますが、通常、抗体を持っていれば、うつすこともうつされる可能性も低いとされているため、自分が抗体を持っているかどうかを知ることは、社会活動や経済活動を行う時の安心材料になりますね。

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