新型コロナウイルスに関する検査どれを受けるべき?「抗原検査」とは
2020年から続く「新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)」の流行を受けて、手指の消毒やリモートワークなどの新しい生活様式がすっかり定着しました。また「PCR検査」、「抗体検査」、「抗原検査」というさまざまな検査の名前についても毎日のように耳にしますが、実際にそれぞれの検査内容の違いを説明するのはなかなか難しいことかもしれません。
今回はコロナ禍に知っておきたい用語の中から「抗原検査」について説明します。
ワクチンの接種も段階的に始まり、新型コロナウイルス終息に向けて希望の光が見えつつありますが、感染者数の下げ止まりなども懸念され、まだ油断はできない状況にあります。今後も、感染が疑われた場合や免疫を獲得しているかどうかなど、自分自身で選択して検査を受けることもあるかもしれませんので、検査の違いについても理解を深めておきましょう。
目次
- 抗原とは何ですか
- 抗原検査とは何ですか
- PCR検査との違いは何ですか
1.抗原とは何ですか
「抗原」とはウイルスが持つ特有のタンパク質のことです。
病原性のウイルス、細菌、カビ、微生物、寄生虫、花粉、人工の化学物質などが体内に侵入すると自然免疫が働き、マクロファージという貪食細胞(どんしょくさいぼう)が異物を捕食して消化します。また、その際に病原体の表面にあるタンパク質(抗原)の断片に目印をつけます。
私たちの体の中では、この目印をもとにウイルスへの感染などから体を守るための「抗体」が作られます。抗体は抗原に結合して毒素を中和したり、免疫反応を媒介するタンパク質「補体」という物質と協力してウイルスに感染した細胞を攻撃したりして、それ以上、体内にウイルスなどの異物が増殖しないような働きをしています。
このように免疫反応が働き出す目印やきっかけとなるのが、ウイルスが持つ特有のタンパク質「抗原」です。
2. 抗原検査とは何ですか
抗原検査とは、新型コロナウイルスに対する抗体を用いてウイルス特有のタンパク質である抗原の有無を検出する検査で、検査時点で体内にウイルスが存在するかどうかを調べる方法です。新型コロナウイルスに感染している場合は、検体を抗体入りの検査薬に入れると抗体が結びつくため「陽性」であることがわかります。
抗原検査には、2種類の検査方法があります。一つは「抗原定性検査」で、鼻咽頭ぬぐい液や唾液を採取して行います。検出には一定のウイルス量が必要なものの、特別な機械などが必要なくその場で検査を実施することができます。
もう一つは「抗原定量検査」で、鼻咽頭ぬぐい液、⿐腔ぬぐい液、唾液などを採取して行います。定性検査より少ない量のウイルスを検出できるものの、検体を検査機関に搬送して検査を行う必要があります。
検査後30分程で結果が出ること、特別な検査機器を必要としないことから、通常、一般の病院では「抗原定性検査」が行われています。発症後 2日目から9日目の場合、追加のPCR検査なしに確定診断とすることができます。結果がその場でわかるので、陽性になった患者を帰宅させることなく入院やホテルなどでの隔離につなげられるのが利点の1つです。
また、PCR検査で陰性だった場合で明らかに新型コロナウイルスと思われる症状が出ている時などには抗原検査も併せて行われることもあります。
抗原検査は病院などの検査機関はもちろん、インターネットやドラッグストアなどでキットが販売されているため自宅などでも簡易検査をすることができますが、結果や体調に不安がある場合などは、医療機関に相談しましょう。
3. PCR検査との違いは何ですか
PCR検査は、鼻咽頭ぬぐい液または喀痰(かくたん)または唾液を採取し、遺伝子を増幅させたうえで、新型コロナウイルスに特徴的な一部分の「遺伝子の配列」が検出されるかを調べます。新型コロナウイルス感染症の確定診断に使用されており、陽性判定が出た場合には新型コロナウイルスに感染していることになります。
抗原検査はウイルス特有のタンパク質を検出します。PCR検査の方が検出率は高いものの、検査結果がわかるまでに1日~2日程度かかります。抗原検査は短い時間で結果が出ることや特別な検査機器を必要としないことから、速やかに判断が必要な場合などに用いられます。
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新型コロナウイルスに感染しているかどうか確認するにはさまざまな検査方法があります。いつどのタイミングでどの検査を受けるのか、特に検査キットを自分で選択する場合には知っておきたいですね。