新型コロナウイルス関連で一番耳にする検査「PCR検査」とは―
体調が悪くなると、病院では血液や唾液、尿などからさまざまな検査が行われます。その中でも2020年から続く「新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)」の影響で、医療に従事していない人たちにも、広く知られることとなった検査が「PCR検査」ではないでしょうか。しかし、なんとなくわかっているつもりでも、その内容を説明するのは難しいものかもしれません。
今回はコロナ禍に知っておきたい用語の中から、「PCR検査」について説明します。
目次
- PCRとは
- PCR検査とは
- 2-1.検体はどのような方法で採取しますか?
- 2-2.結果はいつ出ますか
- 抗体検査・抗原検査との違い
- 2-1.検体はどのような方法で採取しますか?
- 2-2.結果はいつ出ますか
1. PCRとは
「PCR」は「polymerase chain reaction」の頭文字を取ったもので、日本語ではポリメラーゼ連鎖反応といい、分子生物学の分野で使用される専門的な用語です。PCR装置、サーマルサイクラーなどと呼ばれる温度を上下させる装置と専門的な試薬を使用し、DNA分子の中から望んだ特定のDNA断片だけを選んで大量に増幅させる反応のことをいいます。この方法では、個々のウイルスに特徴的な遺伝子を直接検出することができます。
菌やウイルスを検出する際に、専門家が検査機関で何日も何週間もかけて、試験管やシャーレの中で生きた細菌やウイルスの遺伝子を少しずつ増やすのとは異なり、PCRの場合は増幅に必要な時間は1時間~2時間程度と短時間で行うことができます。
2. PCR検査とは
感染症の診断や治療をする時には、その原因となっている病原体を特定する必要があります。その1つの方法がPCR検査です。人の細胞やウイルスなどは、DNAやRNAという遺伝子で構成されており、4種類の「塩基」と呼ばれる成分が規則正しく並んでいます。この塩基の並び方は生物ごとに異なるため、塩基の並び方を調べることで、生物の種類や病気などの異常があるかを調べることができます。PCR検査は、採取したDNA断片を増幅させる反応を利用し、新型コロナウイルスが体内にいるかいないかを検出します。
方法は専門の検査薬と採取したDNAの断片と混ぜ合わせ、それをPCR検査機の中で加熱と冷却を繰り返します。検出したいDNAがあれば陽性、なければ陰性の結果が出ます。
PCR検査は、最近では新型コロナウイルスの検査、というイメージもありますが、実際には水質検査、食品検査、環境検査、土壌検査、犯罪捜査の犯人の特定や親子関係の判定など幅広い分野で使用されています。
2-1. 検体はどのような方法で採取しますか
鼻咽頭ぬぐい液、喀痰(かくたん)または唾液を検体として使用します。鼻・咽頭ぬぐい液などを採取するスワブ検査は、医師、看護師、臨床検査技師等が行います。検体が唾液の場合は病院等に行かなくても、市販のキットを使って簡単に採取することができます。
2-2. 結果はいつ出ますか
検査を行う病院や機関などによって異なりますが、おおむね翌日~3日ほどで結果が出ます。
3. 抗体検査・抗原検査との違いはなんですか
抗体検査は、過去にそのウイルスに感染していたかを調べる検査です。感染初期に現れ、発症から約1週間前後で増え、比較的早い段階で消失する抗体「IgM」と発症から3~4週間経過後に現れ、長期間残るといわれている抗体「IgG」という抗体が体内にあるかどうかを検査します。抗体を持っているかどうかを調べることで、気がつかないうちに新型コロナウイルスにかかっていたかどうか、つまり免疫を獲得しているかがわかります。
抗原検査は、検査したいウイルスの抗体を使用し、ウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。PCR検査に比べ、検出率は劣るといわれていますが、短時間で結果が出ることや検査時に特別な機械が不要なこともあり、早期の発見や対応が必要な場合に行われる検査です。
つまり、抗体検査は今ではなく過去に新型コロナウイルスにかかっていたことがあるか、免疫を獲得しているかを検査するもので、抗原検査はPCR検査と同じく、今、新型コロナウイルスにかかっているかどうかを検査できますが、検査方法はもちろん、精度や結果が出るまでの時間が異なります。PCR検査の方が検査結果が出るまでに少し時間がかかりますが、精度が高いといわれています。
まとめ
新型コロナウイルス関連のニュースなどでよく耳にする「PCR検査」という言葉。しかし、いつどんな時でもPCR検査を受ければいいという訳ではありません。症状や何を知りたいかによって、必要な検査を選択できるようにしておきたいものですね。